長距離ツーリングでお尻の感覚が完全になくなったときの曲

お尻が痛い

バイクという乗り物は風を感じて走る素晴らしい自由の象徴ですが、その自由と引き換えにライダーに過酷な試練を与えることがあります。それは長時間シートに座り続けることによって生じる、強烈なお尻の痛みです。ツーリングの序盤は快適に走れていても、走行距離が伸びるにつれて徐々に違和感が生まれ、やがてそれは鈍痛へと変わり、最終的には感覚そのものが消失してしまう麻痺状態へと移行します。どれほど高級なシートを使っていても、どれほど性能の良いゲル入りパンツを履いていても、物理的な圧迫から完全に逃れることは難しいものです。

目的地まであと数時間あるにもかかわらず、すでにお尻の限界を迎えてしまったときの絶望感は筆舌に尽くしがたいものがあります。信号待ちのたびにステップの上に立ち上がって血流を回復させようと試みたり、走行中に何度も座る位置をずらしてみたりと涙ぐましい努力を繰り返すことになります。そんな孤独な戦いを強いられているとき、ヘルメットの中で流れる音楽は唯一の救いとなるかもしれません。今回は、そんな悲しくも切実な状況に寄り添ってくれる楽曲について考えてみました。痛みを紛らわせるのではなく、今の辛い状況を代弁してくれるような曲たちです。

終わりの見えない鈍痛との戦い

長距離ツーリングにおけるお尻の痛みは、単なる肉体的な苦痛を超えて精神的な修行の領域に達することがあります。最初は少し痛い程度だったものが、時間の経過とともに熱を帯びたような激痛に変わり、さらに時間が経つと感覚がなくなって自分の体が自分のものではないような不思議な感覚に襲われます。美しい景色の中を走っているはずなのに、頭の中の半分以上がお尻のことで占められてしまうのは、ライダーとして非常に悲しい事態です。

サービスエリアで休憩を取れば一時的に回復しますが、再びバイクに跨った瞬間に痛みがフラッシュバックするときの絶望感は言葉になりません。それでも目的地にたどり着くためには走り続けなければならないという事実は、ある種の悲壮感を伴います。そんなときに明るく元気なポップソングを聞いても、身体的な辛さとのギャップで素直に楽しめないことがあるでしょう。むしろ今の自分の状況がいかに過酷であるかを肯定し、その痛みに寄り添ってくれるような少し重厚で、あるいは哀愁漂う楽曲のほうが心に染み入る場合があります。痛みを知る者だけが共有できる、独特の世界観を持った音楽が必要なのです。

限界を超えた身体に響く重厚なサウンド

感覚が麻痺するほどの痛みに耐えているときは、軽いリズムの曲よりも、どっしりと腰の据わったサウンドや、魂の叫びのようなボーカルが心地よく感じられます。薄っぺらい励ましよりも、共に苦しんでくれる存在が欲しいのです。エンジンの振動とお尻の痛みがシンクロし、そこに低音の効いたベースラインや歪んだギターの音が重なることで、ある種のトランス状態に入ることができるかもしれません。

また、歌詞の内容が今の状況と妙にリンクする曲を選ぶのも一つの楽しみ方です。本来は失恋や人生の苦悩を歌った曲であっても、ライダーというフィルターを通すことで、それがシートとの摩擦による苦しみを歌っているように聞こえてくるから不思議です。痛みを耐え抜く自分をドラマチックな主人公に見立て、この苦行すらも旅の思い出の一部として昇華させるためには、選曲のセンスが問われます。耐え難い時間を少しでも意味のある時間に変えるために、あえて悲しみや痛みをテーマにした曲を流し、その感情にどっぷりと浸ってみるのも悪くない選択です。

痛みを分かち合うためのプレイリスト

この過酷なシチュエーションで、限界を迎えた身体に響く楽曲をいくつかご紹介します。

Linkin Park / Numb

まずおすすめしたいのが、リンキン・パークの名曲であるNumbです。タイトルのNumbは英語で感覚がない、麻痺したという意味を持っており、まさにお尻の感覚を失ったライダーの状態そのものを指しています。チェスター・ベニントンの悲痛な叫びと重厚なロックサウンドは、限界を迎えた身体に鋭く突き刺さります。感覚がなくなるほど疲れ果ててしまったと歌う歌詞は、本来の意味とは異なりますが、シートの上で戦うライダーの心に深い共感を呼び起こすことでしょう。

R.E.M. / Everybody Hurts

次に紹介したいのはR.E.M.のEverybody Hurtsです。誰もが傷つき、時には泣きたくなることもあると優しく語りかけるこのバラードは、痛みと戦う孤独なライダーの心を包み込んでくれます。果てしなく続く高速道路の上で、自分だけがこんなに辛い思いをしているのではない、世界中のライダーが同じようにお尻の痛みと戦っているのだと思わせてくれるような、普遍的な優しさに満ちた一曲です。渋滞にはまって身動きが取れず、痛みが増幅していくような場面で聴けば、思わず涙がこぼれそうになるかもしれません。

X JAPAN / 紅

そして最後に、日本のロックバンドであるX JAPANの紅も候補に入れたい楽曲です。冒頭の静かなアルペジオから激しいメタルサウンドへと展開する構成は、ツーリングの楽しさから苦痛へと変わっていくプロセスと重なります。慰め合うことなどできないほどの激しい痛みを、ハイトーンボイスの絶叫とともに吐き出すことで、少しだけ気が楽になるかもしれません。ヘルメットの中でボーカルと一緒に叫べば、お尻の痛みに対する怒りや悲しみがエネルギーへと変換され、次の休憩ポイントまで走り切る活力が湧いてくるはずです。

これらの曲は、痛みというネガティブな要素を、ドラマチックな旅のワンシーンへと変えてくれる力を持っています。