終わりの見えない長いトンネルを走っているときの曲

長いトンネル

ツーリング中に遭遇する長いトンネルは、ライダーにとって独特の緊張感を強いる場所です。真夏の暑い日であれば一時的な避暑地になりますが、数キロにも及ぶ長いトンネルともなれば話は別です。昼間でも薄暗いオレンジ色の照明、轟音とともに響き渡る他車の走行音、そして排気ガスが充満した淀んだ空気。景色が変わらない単調なコンクリートの壁が延々と続く空間は、どこか異世界に迷い込んだような不安感を煽ります。

出口の光がなかなか見えてこないトンネルを走っていると、時間の感覚が狂い、精神的にも少しずつ消耗してくるのがわかります。閉塞感からくるストレスを吹き飛ばし、暗闇の先にある出口を目指してアクセルを開け続けるためには、気持ちを奮い立たせてくれる強力な音楽のサポートが必要です。薄暗いチューブの中を疾走する孤独な時間を、まるで映画のワンシーンのようにドラマチックに変えてくれる、エネルギーに満ちた楽曲について考えてみました。

閉鎖空間をステージに変える反響音の魔法

トンネルの中は音が反響するため、普段聞いている音楽も少し違った響き方をします。重低音はより太く、高音はより鋭く響き渡り、まるで巨大なライブハウスの中にいるような音響効果が生まれます。この環境を逆手に取れば、普段は少し派手すぎると感じるような曲でも、トンネル内では最高のパフォーマンスを発揮してくれるのです。閉塞感を圧迫感として捉えるのではなく、自分だけのプライベートな空間として楽しんでしまうのが、長いトンネルを攻略するコツといえるでしょう。

このシチュエーションで求められるのは、単調な壁の景色を飽きさせないための疾走感と、出口に向かって突き進むための推進力です。しっとりとしたバラードやアコースティックな曲は、トンネル内の轟音にかき消されてしまったり、あるいは孤独感を増幅させてしまったりする可能性があるため、あまり向いていません。それよりも、デジタルなシンセサイザーの音や、一定のリズムを刻み続けるダンスビートのほうが、人工的なトンネルの雰囲気と見事にマッチします。オレンジ色のライトが一定間隔で後ろに流れていく様子と音楽のビートがシンクロしたとき、退屈だったトンネル走行は一転してエキサイティングな体験へと変わるはずです。

光の出口を目指すためのドライビングミュージック

長いトンネルを走っていると、ふと自分が止まっているのではないか、あるいは永遠にここから出られないのではないかという錯覚に陥ることがあります。そんな不安を打ち消すためには、明確なビートと力強いメロディが必要です。近未来的なサウンドや、都会の夜を連想させるような楽曲は、コンクリートに囲まれた無機質な空間をかっこいいステージへと変える力を持っています。ヘルメットの中で音楽に身を委ね、自分は今、特別なミッションを遂行しているのだと思い込むことで、憂鬱な移動時間がスリリングなアトラクションになります。

また、ボーカルのないインストゥルメンタル曲や、歌詞の意味よりも響きを重視した洋楽などもおすすめです。歌詞を追う必要がないため、ライディングに集中しながらリズムだけを体感することができるからです。出口の小さくて白い光が見えたときの安堵感と、そこから一気に視界が開けて青空や緑が飛び込んでくるときの開放感。そのクライマックスに向けて気分を最高潮に高めてくれる曲を選んでおけば、トンネルを抜けた瞬間の感動は何倍にも膨れ上がります。暗闇から光へという劇的な場面転換を演出するのは、あなたの選ぶ一曲なのです。

トンネルの疾走感を加速させる名曲たち

閉鎖的な空間を最高にかっこいいステージへと変えてくれる、疾走感あふれる楽曲をご紹介します。

TM NETWORK / Get Wild

このシチュエーションで真っ先におすすめしたいのが、TM NETWORKのGet Wildです。都会的で洗練されたイントロが流れた瞬間、薄暗いトンネルは一瞬にしてハードボイルドなアニメの世界へと変わります。アスファルトをタイヤが切り裂くようなイメージと、サビに向けて高まっていく転調は、トンネル内の反響音と相まって鳥肌が立つほどのかっこよさを演出してくれます。出口が見えない不安さえも、この曲があればクールな孤独として楽しめるようになるから不思議です。

T-SQUARE / TRUTH

次に提案したいのは、T-SQUAREのTRUTHです。かつてF1中継のテーマ曲としてお茶の間を賑わせたこのインストゥルメンタルナンバーは、スピード感とスリルを求めるライダーの心に火をつけます。サックスの鋭い音色がトンネル内に響き渡り、まるで自分がサーキットを走っているかのような高揚感を与えてくれます。ただし、あまりに気分が盛り上がりすぎてアクセルを開けすぎないよう、スピードメーターの確認は忘れないようにしなければなりません。それほどまでに、走る本能を刺激する一曲です。

サカナクション / 新宝島

そして最後に、サカナクションの新宝島はいかがでしょうか。レトロな雰囲気と現代的なビートが融合したこの曲は、一定のリズムで流れるトンネルの照明と驚くほどシンクロします。丁寧に描くという歌詞のリフレインと、軽快なドラムのビートが、単調な直線を走る退屈さを紛らわせ、ハンドルを握る手をリズミカルにしてくれます。ミュージックビデオのように、ひたすら前へ前へと進んでいくポジティブなエネルギーに満ちており、トンネルを抜けた先に待っている新しい景色への期待感を高めてくれるでしょう。

これらの曲を携えて、長く暗いトンネルを最高のツーリングルートに変えてみてください。